清瀬の小住宅
若い家族のための「小さな佇まいの家」
30代のご夫婦と小さな二人のお子さんのための住まいです。敷地は都心から約30分の私鉄駅を降り、駅前から続く美しいけやき並木を抜けた先にある住宅街の一画にあります。この辺りは未だに畑や雑木林が多く昔の武蔵野の風景が感じられる場所です。私が敷地を初めて訪れた時に、ここにはそっと地面に置かれたような「小さな佇まいの家」が良いと思いました。住まいとしての安心感を感じられる軒の出のある簡素な切妻屋根の箱。建物の周りに門や塀はつくらず敷地の余白を広がりのある庭とし、やがて建物が緑に包み込まれる、そんな姿の住まいを思い描いて設計をしました。内部はどこにいても小さな子供たちの気配を感じられるように、吹き抜けによって繋がる仕切りの無い一室空間としています。また景色の抜けが良い南東の角には食堂を配し、庭との繋がりを考えてコーナーの窓はフルオープンの木製引き戸としました。
内部の仕上げは玄関、食堂、台所をの床を炭入りのモルタル仕上げとし、その他は無垢の床材としています。壁、天井は黒瓦を砕いて混ぜた灰色の漆喰を荒い表情で仕上げています。窓から差し込む光と漆喰の表情が生み出す内部のグラデーションが室内に豊かな広がりを生み出しています。完成した家は小さな中に大きく豊かな空間を内包する住まいとなりました。これは閉鎖的で内向的な都市型住宅と開放的でおおらかな郊外型住宅の中間に位置するような新しい形式の住まいではないでしょうか。こうした挑戦的な「小さな佇まいの家」が若い家族の成長と共に、今後どのように変化してゆくのか、ゆっくりと見守ってゆきたいと思います。













所在地:東京都清瀬市
構造・規模:木造 2階建
竣工年月:2017年3月
敷地面積:96.07m2
建築面積:44.71m2
延床面積:76.72m2
設計:若原アトリエ
構造:長坂設計工舎
施工:木村工業
写真:中村絵